平成30年1月1日施行で職業安定法が改正されました。求人者と求職者との間で労働条件が違うというようなトラブルの防止のために、求人・募集情報の適正化が図られました。主な内容は次の通りです。

  • (1)職業紹介事業者に紹介実績等の情報提供を義務付ける。
  • (2)求人者について、虚偽の求人申込みを罰則の対象とする。また、勧告に従わない場合は公表するなど指導監督の規程を整備。
  • (3)募集情報提供事業者(求人情報サイト、求人情報誌等)について、募集情報の適正化等のために講ずべき措置を指針(大臣告知)で定めることとするとともに、指導監督の規程を整備。
  • (4)求人者・募集者について、採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合等に、その内容を求職者に明示する。

※虚偽の条件を提示して、ハローワーク、職業紹介事業者等に求人の申込みを行った場合は、6か月以内の懲役または30万円以下の罰金の対象となります(改正職安法第65条)。

メリット
求職と求人のより適切かつ円滑なマッチングを進めていくことができます。
当初明示された募集情報・労働条件を保存することが義務づけられましたので、履歴を残しておくことで求職者とのトラブル回避にもつながります。
デメリット
虚偽の条件を提示して、ハローワーク、職業紹介事業者等に求人の申込みを行った者は罰金の対象となります。

労働条件明示について Clear Indication of Working Conditions

試用期間右図※1を参照

試用期間を設定し、試用期間中の労働条件がその後の労働条件と異なる場合には、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を分けて明示します。

労働者を募集する企業

本社で子会社や関連会社の募集などをまとめて行っている場合、会社名を分けて記載することが必要になります。
フランチャイズの場合、フランチャイズ本部ではなく実際に労働者を雇用しようとするフランチャイズ経営者の氏名・名称の明示が必要になります。

派遣労働者を募集する企業

技術者の派遣を行っている企業に社員として採用され、「常用型派遣」として派遣先の企業で仕事をする場合など、派遣社員として雇用しようとする場合にはその旨を明示することが求められます。

裁量労働時間制を採用右図※2を参照

裁量労働制が適用される場合には、その「みなし労働時間」を労働時間の記載欄に明示することが求められます。

固定残業代を採用右図※3を参照

固定残業代は、具体的には、以下の明示が求められます
・固定残業代を除いた基本給の額
・固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
・固定残業代を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う

記載が必要な項目 記載例
業務内容 一般事務
契約期間 期間の定めなし
試用期間※1 試用期間あり(3ヵ月)
就業場所 本社(●県●市●-●)又は
▲支社(▲県▲市▲-▲)
就業時間
休憩時間
休日
時間外労働
9:00〜18:00
12:00〜13:00
土日・祝日
あり(月平均20時間) ※2 裁量労働制を採用している場合は、以下のような記載が必要です。
(例)「企画業務型裁量労働制により、◯時間働いたものとみなされます。」
賃金 月給20万(ただし、試用期間中は月給19万円) ※3 時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(いわゆる「固定残業代」)を採用する場合は、以下のような記載が必要です。
1.基本給 ☓☓円(2の手当を除く額)
2.□□手当(時間外労働の有無に関わらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)
3.○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
加入保険 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険
募集者の氏名又は名称 ○○株式会社
(○派遣労働者として雇用する場合) 雇用形態:派遣労働者

今回の改正により追加等された事項

労働条件の変更明示の方法

採用時の条件が、あらかじめ示した条件から変更となる場合は、
変更が確定後にすみやかに、労働条件の変更明示が必要となります。
その方法としては、以下2つの方法があります。

  • 変更内容等を対照できる書面の交付
  • 変更前の労働条件通知書に、変更となる箇所に下線を引き、着色し、注記する。

また、変更明示を受けた求職者から、変更した理由について質問された場合は、
適切に説明を行うことが必要となります。

導入時の検討事項 Consideration

今回の改正による、求職者への労働条件の明示については、以下の検討が必要です(指針)。

01

明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容となっていないか。

02

試用期間と本採用の労働条件が異なる場合、それぞれの労働条件を明示しているか。

03

労働条件の水準、範囲を可能な限り限定しているか。

04

労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示しているか。

05

明示する労働条件が変更される可能性がある場合、その旨明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせる配慮をしているか。

具体的なアクション Action

Action01
求人情報・労働条件通知書等の見直し、書式改訂