「限定正社員」とは、限定された部分については、その範囲内で役割を担い、それ以外の非限定の部分については、正社員と同等の役割を担う社員のことで、限定される内容は、
①労働時間、②勤務地、③職務・職種の3つあり、組合せる場合もあります。

労働時間を限定する場合は、通常の正社員と比較して、短い所定労働時間の中で働くことになります。育児・介護と両立して働く人やキャリアアップのための必要な能力・資格を習得する人など、フルタイム勤務や残業が難しいケースに適しています。
一方、勤務地を限定する場合は、居住地から通勤をすることが可能な範囲に限定して働くことになります。家庭の事情等で、単身赴任や転勤が難しいケースに適しています。
また、職種・職務を限定する場合は、職種転換なく働くことになります。1つの職務や職種を専門として、経験を積むことが可能となり、プロフェッショナル人材の育成を目指すケースに適しています。

メリット
多様な働き方の1つとして、育児や介護による離職の抑制や、専門分野をもつ人材の確保ができるようになります。また、労働契約法改正に伴い、有期雇用社員を無期雇用に転換する際に、選択肢の1つとして活用することができます。
デメリット
複数の雇用形態が混在することになるため、管理の煩雑化が懸念されます。
また、限定された内容に応じて給与体系や評価や賃金、昇格等の待遇を限定内容に適したものに設定し、通常の正社員との均衡を取る必要がありますが、そのバランスの設定が難しいことや、組織が硬直したり、社員から不満がでたりするリスクもあります。

限定正社員の活用例

導入目的 限定する内容
転職を望まない社員の離職を防止
地元志向のニーズを持つ社員を確保したい

A 勤務地限定

全国転勤はできないが、転居を伴わないエリア内での異動とする。課レベルの組織のマネジメントを行う管理職まで担うことができる。

育児や介護を理由とした離職の防止をしたい

A 勤務地限定 勤務時間限定

一時的にフルタイムで働けない場合等には、その期間中は週4日または1日7時間勤務などが選択できる。課レベルの組織のマネジメントを行う管理職まで担うことができる。

プロフェッショナル人材を育成したい

B 職務限定

マネジメントは行わず、あくまでも職務領域におけるリーダーやメンバーとしてその専門性を発揮する。(管理職にはならない)

限定正社員の活用範囲を表した図

正社員は非管理職〜管理職(大小の組織マネジメント)全ての役割を担うことに対し、限定正社員Aタイプ(勤務地限定・勤務時間限定)は、課レベルの組織マネジメントを行う管理職まで担うことができる。
限定正社員Bタイプ(職務限定)は、職務領域における専門性を発揮するため、マネジメントは担わない。

限定正社員の解雇要件について

勤務地や職務の限定が明確であっても、事業所の閉鎖や職務の廃止の場合に、直ちに解雇が有効となるわけではなく、整理解雇の四要件(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務を尽くしたか、③被解雇者選定の妥当性、④手続きの妥当性)を否定する裁判例も現在ないため、解雇回避のための措置を講じることが求められます。

整理解雇について

1.勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定の場合

解雇回避のための措置として、配置転換が求められる傾向があります。

2.高度な専門性を伴う職務限定や、他の職務と明確に区別される職務限定の場合

配置転換にかわり、退職金の上乗せや、再就職支援によって、解雇可否努力を尽くしたとされるケースもある。

能力不足解雇について

1.高度な専門性を伴わない職務限定の場合

改善の機会を付与するための警告、教育訓練、配置転換、降格等が求められる。

2.高度な専門性を伴う職務限定の場合

改善の機会を付与するための警告は必要だが、教育訓練、配置転換、降格等が不要とされるケースもあります。

導入時の検討事項 Consideration

01

導入目的

(育児介護支援か、無期雇用転換の選択肢か、専門人材の育成か?)

02

限定する内容

(労働時間、勤務地、職務・職種)

03

制度、処遇の決定

(賃金、評価、昇格、教育訓練等、既存の正社員との均衡処遇)

04

転換制度

(正社員、限定正社員、非正規社員からの転換のしくみはどうするか)

05

申請手続き・フロー

具体的なアクション Action

Action01
就業規則の改定
Action02
労働契約書の作成
Action03
転換に伴う申請等の書式準備
Action04
社内周知・説明会の実施

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