現状、兼業・副業については認めないとする企業が8割以上と大多数を占めていまおり、従来の厚労省のモデル就業規則でも、副業・兼業は禁止するという考え方が主流でしたが、政府は働き方改革の1つとして、社会全体として考えると、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から、地方創生にも寄与し、結果として経済成長にもつながると考え、多様な働き方の1つとして、推奨しています。

メリット
労働者の自律性・自主性を促したり、社内では得られない知識・スキルを獲得することができます。
また、優秀な人材の雇用シェアが可能となり、社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながることも期待できます。
デメリット
長時間労働による従業員の心身への影響や生産性の低下など、本業への支障が懸念されます。また、人材の流出や、業務上の秘密漏洩や企業の信用棄損、本業との競業による損害発生等のリスクも考えられます。
導入にあたっては、就業規則の改正、他社との労働時間の通算に伴う割増賃金の負担や社会保険料の調整など、管理コストが発生することも課題となります。

労災保険の給付額

労災保険給付額は、事故が発生した就業先の賃金分のみを算定基準額としているので、
全ての就業先の賃金合算分を補償することはできません。
(通達:昭和28.10.2基収3048号)

【例】就業先A・Bを兼業し、月合計45万円の賃金を得ている労働者が、
就業先Bで事故に遭い、就業先A・Bともに休業した場合

就業先A・Bを兼業し、月合計45万円の賃金を得ている労働者が、就業先Bで事故に遭い、就業先A・Bともに休業した場合の解説図

通勤災害について

本業の会社から兼業先の会社に向かう場合は、兼業先の労災が適用され、逆に兼業先から本業先の会社へ向かう場合は、本業の会社の労災が適用されます。

通勤災害の発生場所と給付基礎算定の基となる賃金を表した図

導入時の検討事項 Consideration

01

労働時間の通算(本業と兼業先において労働時間は通算されますので、労働時間管理方法を検討する必要があります)

02

時間外手当の支払い/36協定(時間外労働の支払い義務、および36協定の締結は、あとから労働契約した使用者が責任を負います)

03

安全配慮義務(他社での就労状況の把握と労働時間管理が求められます)

04

健康管理(健康診断の実施や過重労働による健康障害防止の観点からの措置の検討が必要となります)

05

労災保険(給付額は事故が発生した就業先の賃金分のみが算定基礎となります)

06

情報漏えい(より厳格な管理が必要となり、組織管理体制の強化や誓約書の提出が必須となります)

07

企業秩序の維持(本業をおろかにしない仕組みの検討します)

08

所得税(20万円以上の副収入がある場合は、個人による確定申告が必要となります)

具体的なアクション Action

Action01
副業・兼業の許可基準(どのような内容・頻度・時間の副業・兼業をどの対象者に認めるか等)
Action02
就業規則の改定(兼業・副業規程の新設)
Action03
申請書式の作成・管理体制の整備